若松ゴルフ倶楽部 グリーン改修にて

 

グリーン改造工事 基本構想    

                                             2018.11月  中田浩人

 

はじめに

この度の、若松ゴルフ倶楽部でのグリーン改修工事の目的は、近年の地球温暖化が影響する夏場の気温上昇からグリーンコンディションの品質確保が難しくなった旧来型ベント品種から新世代型で耐暑性に優れた草種への転換と、20数年が経過し劣化した土壌入れ替えが最も大きな目的となっている。

次にこの機会に併せ全体の距離の延伸と、前回のワングリーン化工事において当時の流行でもあった大きなグリーンを見直し、戦略性と景観性を見直しサイズダウン化の改修をすることとなった。倶楽部の総意を汲み取り、今回の改造に反映することとなった。

 

 

グリーン改修工事の主なポイント

□ 草種をペンクロスベントから007とタイイの混播(ロイヤルリンクスセブン)

 ベント種子の開発は世界的に進んでおり、近年ではペンクロスベントを第1世代として現在では第4世代の品種改良種が主流となっている。夏場、目数の減少が少なく低い刈り込み高に適している。今回採用の007とタイイの混合は近年注目され、実績を徐々に出している。本コースにおいても昨年より試験をし、確かな感触を得ている。

 

 

□ コース全体距離を出来るだけ伸ばす方向で考える。

 今回の改造において、大きく変わるホールとして9番ホールは50ヤードほどグリーンを奥に追い込む。クラブハウスからもグリーンが見えるところまでくる。

 全体的にサイズダウンさせる方法論として、手前側を多めにカットし、グリーンセンターを後方にずらすことでそのホールの全体距離は若干でも伸びる方向となる。総体距離は100ヤード前後となる見込みであるが、殆どのホールで手前をカットするので、今までグリーン手前に何とか乗っていたショットでは届かなくなり、相対的な難易度は現状より大分上がる方向である。

 

 

□ グリーン面積は530630㎡程度を目途とする。

 グリーンの適正面積の考え方はその時代ごとにコースデザインの傾向やメンテナンス技術、そして、入場者数の推定により様々に数値化されることがある。前回改造時の時代性は日本のみならず世界における新設コースの主流として、ゴルフ人口の将来的な増加傾向の中700㎡~800㎡程度が基準値であったと記憶する。

若松においては、将来的にもバブル期の様に年間入場者は4万人を超えることは考えにくく、メンテナンスにおいても新品種を使う事で、面積的には500㎡程度で十分耐えうると考えられる。

また、面積の縮小化はメンテナンスコストにも影響が出てくると言える。基本的に従来品種に比べ新品種はコストアップすると言われている。その理由として、肥料目砂については、少量多回が望ましいという考えに起因している。しかしながら、グリーンの面積が平均に100㎡以上減少すれば、トータル面積は1800㎡~2000㎡が減少する。面積に比例して下がるわけではないが、マイナスに転じられると考える。逆にいえば今の面積を縮小しなければ、コストはアップするともいえる。

 

 さらに、現状でのグリーンの起伏(アンジュレーション)については、概ね1~3%が現状でやや単調さを感じる。今回の改造においては、その傾斜を1~5%と今よりは若干強めの傾斜を設けパッティングでのラインの変化をつけることで面白みやホールごとの特徴を増してゆきたいと考える。

 

□ グリーンのコンパクト化に併せてガードバンカーの改修も考慮する

グリーンの新しい形状において現在のバンカーの位置も変えなければならないホールが出てくる。現状のガードバンカーの配置については、ややグリーンとの関連性が弱く、難易度としても物足りなさを感じる。バンカーそのものの存在感とライン自体の優美性を上げてゆく方向で改造を進める。

 

 

 

各ホールのポイント

 

No1 現状のセッティングとは大きく変わらないが、グリーンの幅を少し縮め、併せてバンカーを寄せてゆく。

 

No2 右手前のバンカーを少しFW側に寄せる。現行グリーンの形状の右奥をカットしグリーンバックのラフにゆとりを取る。

 

N03 このホールは大きく変わり、砲台型のグリーンとなる。これは2HL側からの排水の問題がり、大雨の際には2HL側から大量表面排水が流れ込む状況となっている。よって、グリーンを高くしてゆくことが望ましいと考えられた。上田氏による当初の設計がそうであったからということもある。グリーンはティー方向から対角線状にグリーンをセッティングし、同様の方向で半分に分け薄い2段グリーンとしている。現状のグリーン手前のバンカーは撤去し、右側と左側にバンカーを配する。手前の現状バンカーから切土をし、新グリーンの高さまで約2.5mのスロープで上がる事となるが、グリーン面自体は現状より1m上がる。

 

No4 グリーンの幅を縮め、併せてバンカーを寄せる。グリーン左側にマウンドを設け左コーナーを明確にする。

 

No5 グリーンは原型を尊重し若干勾配を強める程度。左右のバンカーラインを修正する。

 

No6 グリーンバックのマウンドからの尾根をグリーンに差し込む形をとる。アンジュレーションの流れは基本的に現状を維持する。左手前のバンカーラインを修正する。

 

No7 横に長い大きなグリーンであるが、グリーン右手前を10m程カットし、周辺のバンカーを構成しなおしてゆく。

 

No8 左のバンカーを飛球線に被る様にラインを修正しグリーン右奥をカットし右奥のバンカーを手前に引いてくる。

 

No9 このホールでは、グリーン裏側が5~6m程落ち込んでいる松林の中を伐採し、新しいグリーンを作る計画である。これによって、現状BTから334ydは385ydと51yd延伸となる。当初予定ではなかったが、左手前の松の大木を残した。それにより、明確にグリーンへの花道は右側となる。グリーン左にカップを切った場合はマウンド越しのブラインドホールとなる。そのマウンドに、バンカーを配するかどうかは結論がいまだ出ていない。グリーン右の池に対して救済的なバンカーを造る予定である。現状より3m程度低い位置にグリーンは仕上り、カート道路もルートを切り替えてゆく。クラブハウスからその景色が美しいホールとなりうる。

 

No10 左手前のバンカーを砂線が見えるように切り上げる。グリーン奥側の両サイドに薄いマウンドを作り変化を持たせる。グリーン手前は若干カットされ奥側は多少幅を絞る。手前のポジションは現状とアンジュレーションの流れは変わらないが、奥側については今と逆でボールは周りから中に曲がるラインとなる。

 

No11 3打目が打ち上げでグリーン面は見えない。現状では左手前にダブルバンカーとなっているが、サードショットではバンカーの砂線は見えづらい。これを1個に集約し、現状手前のバンカーで、1.3m程度の深さであったものを2m程度のやや深めのバンカーとする。右のグリーンの入り込みを3m程カットし、バンカーの存在感を現状より強くする。

 

No12 このホールは現状を維持する。周辺のバンカーについては綺麗にラインを切り直す程度とする。

 

No13 現状グリーン手前は、右側にベロのように張り出している。手前を7m程カットし、右奥を張り出す。右のバンカーラインを若干グリーン側に寄せることで、その存在感も増す。左側の深く大きなバンカーは埋めてラフとする。このコースでは今までガードバンカーはグリーンの両サイドにあった。それが逆に印象性を下げることにもなると考えた結果、このバンカーを埋めてしまうという結論である。

 

No14 グリー手前を12mカットする。左手前のバンカーを回転させ、グリーンに対してかぶさってくる様にする。幅は若干広げるようにすることで、バンカーとの関連性を高める。グリーン手前にマウンドを設け、IPから距離感を錯覚させ、印象的なうねりを作る。

 

No15 右の2つのバンカーを修正する。左奥にグリーンは広げ、右側に幅が出ているグリーン面は6m程カットされる。

 

No16 グリーンは10㎡程小さくなる程度で手前をカットし、幅をもう少し出す。両サイドのバンカーは大きめで、手前の張りが邪魔をし、バンカーラインを隠している。その手前の張りを落とし、大きすぎるバンカーを適正な大きさに縮小する。、右のバンカーの右マウンドは下げる。

 

No17 基本的にはグリーンは角を取る程度で、変更は少なく、バンカーの見え方が浅い為、ラインを修正する。

 

 

No18 グリーン左側への民家への打ち込みが予てより懸念されていた為、グリーンを右側へシフトする。現状正面にあるマツは伐採し、旧サブグリーン側へ寄ることとなる。併せて、カートの導線も変更してゆく。現状の左奥のバンカーは無くなる。グリーンは左が高く右が低い横方向へ細長い形状となる。